認知症ケアの新常識「ユマニチュード」ってなに?
あまり聞き慣れない言葉ではありますが、ユマニチュードは、高齢者への関わり方、特に認知症高齢者への関わり方に有効とされるケアの技法です。ここ数年、認知症ケアのひとつとして広く知られるようになり、日本の医療機関や介護施設でも徐々に普及しつつあります。
この技法の特徴は、ケアの対象となる人の「人間らしさ」を尊重し続けるということです。
ケアをする人は、ケアを受ける人に、
たとえ反応がなくても「あなたを大切に思っています」「あなたはここにいますよ」というメッセージを発信し続けます。
それによって言葉によるコミュニケーションが難しい人とポジティブな関係を築いていく事が目的です。
この技術をきちんとマスターすれば、介護のプロだけでなく、ご家族なども認知症のご家族のケアに役立てる事が可能です。
今回の特集ではユマニチュードの概要と基本技術について解説します。
「ユマニチュード」の基本
ユマニチュードは、「人とは何か」「ケアをする人とは何か」を問う哲学と、それに基づく実践的な技術から成り立っています。
ユマニチュードの哲学
「ユマニチュード(Humanitude)」という言葉は、フランス語の造語で「人間らしさを取り戻す」という意味をもちます。
もともとはフランスの体育学の専門家であるイヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティの両氏によって開発された、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケア技法です。
ケアを行う人は常に「あなたは大切な存在です」「あなたのことを大切に思っています」というメッセージをケアを必要とする人に発信し続けることが重要です。
それによって人は自分が唯一の存在として、自分が尊重されていると感じることができます。ユマニチュードとはケアを必要とする人の人間らしさを尊重し、それを伝えるための哲学と技術なのです。
基本の4つの柱
人と人のより良い絆を結ぶための具体的な方法として、「見る」「話す」「触れる」「立つ」
の4つの柱があります。(下図を参考)
この4つの援助を通して、「わたしはあなたを大切に思っていること」を相手にわかるように伝え、ケアを受ける人に「今自分が何をしているのか?」と目的意識を明確にします。
それによって、少しずつ「この人と一緒にいるのは心地良い」という感情記憶に残るようになり、介護を受け入れてもらいやすくなります。
ケアする際の5つのステップ
認知症の人とそのお世話を行う人との間に絆をつくるため、実際にケアを行うにあたっては、いきなり開始するのではなく、日々の活動を5つのステップで区切り、まるで出会いから再会の約束まで物語が展開されるようにとらえていきます。
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